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2004.02.21

真昼の悪魔 うつの解剖学 下

cover
「真昼の悪魔 うつの解剖学 下」

 アンドリュー・ソロモン著
 原書房  2003/07
 [ Amazon ] [bk1]

  進化心理学〜進化精神医学に関する章あり。まとまっていて重宝。
 ・適切でない路線を変更するための機能
 ・利他主義を誘発する効果を持つ
 ・愛着を強調するための悲嘆
 ・高次脳と低次脳の軋轢
 ・前頭葉左右のアンバランス
等々挙げられている。

 シンディ・エンジェルの →『動物たちの自然健康法』に出てきた”人間のPSTDや鬱状態は動物のフリーズ(状況変化をひたすら待つ戦略)につながるものではないか”という推察は紹介されていない。
 あ〜、『動物たちの自然健康法』
  「病気はなぜ、あるのか」の著者名
  ランドルフ・N・ネシーがランドルフ・ネスになっていた
と書いたけど、この「真昼の悪魔」ではランドルフ・ネッシーになってるよ。yan

 著者的には「うつ病の進化を知ることが、その治療にそれほど役立つとは思わない」としている。
 が、うつ病が”進化的に不要になった虫垂”なのか”自己調整メカニズムとして有用な機能”なのか、そこを明らかにすることは、病か病でないかの境界が曖昧なこの病気の治療指針の決定に有用であろうと結ぶ。

※ 過去の環境において適応的だったが急な環境変化によって淘汰されきらず不具合をきたしながらも残っている性質や形質、そういうのをタイムラグならぬゲノム・ラグ仮説と言うんだそうな。(p.280)

狂気の起源 うつ病は旧石器時代には適応的だったかも
2001/05  HMS Beagle, Issue 102 Evolutionary Psychology

挿画

 あと、冒頭の自殺に関する章も注目。
 いきなり「うつ病だからといって必ずしも自殺の恐れがあるとは限らない」と切り出してくれる。
 最近日本でも「うつ病を知ろう」「うつ病対策で自殺を防ごう」な広報が盛んにされるようになったし、どうしても自殺願望=鬱病扱いばかりになってる感じなところを、しょっぱなからクギ刺された。
 でもまぁ、実際うつ病対策で自殺はけっこう減るわけで。

ドイツの自殺者数が一年で4割も減りました!
うつ病や精神病への偏見を無くそうキャンペーンの成果です
2001/10  Yahoo! News / Reuters German Project to Tackle Suicide Shows Success

 自殺の感染(後追い自殺、模倣自殺)についても述べられているが、これについては →「自殺は感染する」にて。

●右画
 

 「歴史」の章では(西欧での歴史だが)、基督教的に「魂を完全に保てないのは個人の不徳であり恥」なので心の病は偏見の中不遇を極めた、という話も。
 このあたり、去年急逝したロイ・ポーターの本も併読オススメ。

本ミニ「狂気の社会史:狂人たちの物語」 ロイ・ポーター著 叢書ウニベルシタス 1993(原書=1987/A SOCIAL HISTORY OF MADNESS)

キルト

 → 2月5日付 「真昼の悪魔 うつの解剖学」上巻や原書について


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