自殺は感染する
「真昼の悪魔」と「ティッピング・ポイント」に共通する項目として「自殺の伝染」現象への言及がある。
![]() 「真昼の悪魔 うつの解剖学 下」 アンドリュー・ソロモン著 原書房 2003/07 参照 |
冒頭の自殺に関する章で、自殺の感染(後追い自殺、模倣自殺)について述べている。(模倣行動は自殺に限ったことではなく詐欺手口を真似するとか、17才犯罪の流行とか、いや別に犯罪に限らずとも人間は「提示された手段を行動の選択肢に加える」ものであって)
この自殺感染というミームの適応性について誰か云々してなかったっけか。
自殺の手段がなければ自殺は減る。手段を提示すると自殺が増える。
これこないだ流行った「ネット自殺+車内練炭」が、まんまですね。素直な人々。

自殺に不名誉が強くまとわりついていれば、自殺は減る。
ギリシャでは自殺者を埋葬できないなどの関係で、自殺が少ないとのこと。
すると日本は西欧に比して自殺に抵抗感薄し?
「日本人の死のかたち 伝統儀礼から靖国まで」 波平恵美子著 朝日選書 朝日新聞社 2004/07
p.105
自殺にいたった原因が何であれ、自殺は残った人びとに大きな衝撃と悲しみ、そして死んだ人に対する怒りの気持ちさえ残す。民俗資料の中には、自殺者に対しては遺族がその遺体を口汚くののしりながら箒で叩くことが儀礼としておこなわれ、葬式の中に組み込まれていたという事例が見出される。この行為は儀礼としておこなわれるとはいえ、残された家族の感情の表現でもあろう。自殺、事故死、出産時の死亡者の遺体は、共同墓地内でも別の区画に埋葬されていたことが全国的に見出され、このことから、信仰あるいは儀礼の領域では、自殺など異常な死に方をした人は、死と再生のサイクルに組み込まれえないゆえに一般の死者とは区別され、死後も処罰され差別されることがわかる。死と再生の世界観を人びとが共有していた時代には、自殺者をはじめ異常な死に方をした人の遺体を別区画に埋めることが、続けて異常な死に方をする人が出ることの歯止めになると信じられていた。(2005/01加筆)
波平は、変化や移動の激しい現代では
「自殺の歯止めとなるような儀礼や伝説が
社会の中に残っていくことはもはやない」
と指摘する。
なお、「真昼の悪魔・下」でも”日本の三原山”が世界的に有名な場所として登場する。
三原山自殺の流行については「早すぎる夜の訪れ」が詳しい。↓
![]() 「早すぎる夜の訪れ 自殺の研究」 ケイ・ジャミソン著 新潮社 2001/08 (原書1999/Night Falls Fast) |

![]() 「ティッピング・ポイント いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか」 マルコム・グラッドウェル著 飛鳥新社 2000年 参照 |
”自殺の感染”に関する章あり。
ミクロネシアのある島で「形式にのっとった自殺」が流行してしまい、世界で最も自殺率が高い地区になってしまったという例。
自殺が大きく報道されると交通事故死が増えるというデータ。
自殺報道=自殺誘いの広告だ 等々。

以下は過去記事関係で。
「自殺は感染するから報道しないほうがいいよ」という話は昔からなされているのだが、昔と比べて自殺報道は減っているのかどうかは見ている限り確認しづらい。減ってる?
メディアは自殺の報道に細心の注意と責任を持ってくれ
2001/10 ★ Experts Advise Media on Responsible Suicide Reporting Psychiatric News Volume 36, Issue 18
無意識のうちに自殺を美化したり理想的に描いたりしてしまう記者たち
2001/08 ★ Study warns media of 'copycat' suicides The Nando Times
病理学的要因としての報道 自殺や殺人事件の詳細な報道は避けるべき
2001/07 JAMA Vol. 286 No. 3 ★THE NEWSPAPER AS A PATHOLOGICAL FACTOR
自殺の増減には、環境(社会要因)と情報(選択肢としての自殺提示)が密接に関係している。
社会要因、自殺に関係する情報、この2つのどちらかが欠ければ自殺はかなり減るであろうと推察されている。
月の満ち欠けと自殺 新月の時に自殺が増加(イギリス)
2000/07 ★ Suicide 'linked to' the moon BBC ONLINE
自殺は晴れた日に多い
2002/02 ★Suicide Most Common on Sunniest Days, Study Shows Yahoo! News / Reuters

なお、自殺報道は自殺願望者に自殺を思いとどまらせる効果があるよ、という結果の調査もあるので参考までに。
自殺は伝染しない
「誰かが自殺した」という情報に接した人は自殺を思いとどまる傾向
これまで思われていた「自殺報道は自殺を引き起こす」とは逆の結果が出た
2001/07 ★Study Contradicts Theory Suicide Is 'Contagious' Yahoo! News
2001/07 ★Exposure to Suicide May Deter Suicidal Behavior Yahoo! News / Reuters

2004/04 追記:
韓国, 自殺45分に 1人
1982年 10万名当たり 9.4人だった 自殺死亡者数、2002年には 19.2人
2004/03 韓国語和訳 中央日報(Naver経由)
報道などで自殺が伝染する現象(自殺の連鎖)は、昔ゲーテの『若きウェルテルの悩み』が出版されたときに自殺が巷にあふれたことから 「ウェルテル効果」と称される。
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コメント
当記事のみからの直感的感想ですが_o_、自殺報道を見た時点で自殺を考えていた人は思いとどまる可能性が高く、その時点で自殺を考えていなかった人にとっては自殺手段の提供となる、ということになりそうな気が。
見せていい人と見せちゃいけない人がいるのは当然としても、傾向的閾として上記のような分類ができちゃうんだろうか…とか思ったり^^;。そうだとしたらやっぱり報道としては、流しちゃダメ、ということになりますねぇ。
投稿: Shin | 2004.04.11 00:34