ヒト改造・未来・欲望×2
![]() 「それでもヒトは人体を改変する 遺伝子工学の最前線から」 グレゴリー・ストック著 早川書房 2003/12 [ Amazon ] [bk1] 原書とその書評: Redesigning Humans (2002/04) |
いい勝負だ。あっちのほうが影響力では大きいかもしれないが、中身ではこっちのほうが勝っているかもしれない。
何との勝負か、相手は言わずと知れたフランシス・フクヤマ。
![]() 「人間の終わり バイオテクノロジーはなぜ危険か」 フランシス・フクヤマ著 ダイヤモンド社 2002/09 [ Amazon ] [bk1] 原書とその書評:Our Posthuman Future (2002/04) |
両原書はほぼ同時期に出版され、著者どうしのディベートも企画されてかなり盛り上がった。
邦訳書も両書ほぼ同時に出てほしかったんだけど、残念ながら1年以上のタイムラグで出版。
ストック邦訳のあとがき、ちゃんと2002年当時のフクヤマvs.ストック論争の経緯をフォローしていてえらい。
当時の記事
「それでもヒトは人体を改変する」は装丁が間違ってないか?中身の面白さを全然伝えてない。

両書は印象好対照。(フクヤマのほうはずいぶん前に読んだのでうろ覚えご容赦を)
フクヤマ:ストック
計画:予言
政治屋、コントロール:観察屋、レポート
理念と願望、自己規範執着:趨勢やナリユキのドライな見通し提示
フクヤマのほうは行政のお偉いさんが”施政方針をどうするか”に拘泥している感じ。
・どのような基準と理念を持って倫理施策を提言すればいいか。云々
それに比べるとストックのほうは、今どきのインターネットユーザにはかなり親近感を抱かせる実際的な論調。
・こういう欲望はかくかくたる条件があるのでこれこれ程度にとどまるだろう。
・ここでこれを禁止してしまうと将来的に期待できるより大きな利益をつぶしてしまうことになる。
・過去の経緯からしてもバイオでなしくずしに状況悪化するとは思えない、実際問題どっかで自然にバランスは生じる。杞憂だ云々
未来世代はそれなりに自己正当化しそれなりの価値観を形成するであろうという相対的見解も明記されている。
ぜひ両者の読み比べをお勧めしたい。
参考資料・情報も豊富に挙がっているし、これ2冊読めばかなりいっぱしな状況把握ができる感じ。

ところで、ストックの本を読んでいて思い出したのは 「環境危機をあおってはいけない」 。
冷や水っぽいところ、行政の外で趨勢を見通そうとしているところ、やや楽観主義的なところがよく似ている気がする。
ストックの「適度にバランスはとられるであろう」な楽観的未来は、「環境危機をあおってはいけない」と同様に、世間に必要以上の恐れと警戒があってそれが過剰な欲望と利益追求と衝突する、その経緯があってはじめてもたらされるもの。冷や水で冷えるのはそれこそ良し悪し。
楽観的にせよ、悲観的にせよ、情報・状況を把握せぬままでの推進発信は不如意な未来の招聘に荷担するだけ。
見ろ。見ておけ。

ストックの本ではファイボーグも紹介されているが、これ日本語で検索するとヒットゼロ。
「猿と女とサイボーグ」 とか 「サイボーグ・フェミニズム」とかは日本じゃ流行んないのかな。そういう話ではなく単にファイボーグはメジャーじゃない瑣末なネタなのか。
※ ファイボーグ
Legacy Systems and Functional Cyborgization of Humans © 1995 Alexander Chislenko
(fyborg 自己診断表あり:中世の騎士がファイボーグってのはいいなぁ(^_^))

ついでに。
数日前の 「ManNotIncluded.com 卵子販売事業」報道に絡めて、そこいらで「よし!」だの「抵抗がある」だの注釈している”科学系を自負する”お方々のうち、自分の立場を省みることができている(自分の位置を客観的に把握している)人はどのくらいいるのだろうか。
生命倫理系で挙がっている種々の問題点観点をたいして把握せぬまま(いや、それどころか卵子採取に関わるリプロダクティブ・ヘルスの問題すら理解していないようなレベルで)”自分の感情や欲望”基準、自分の立場基準&狭視野で素朴にリアクションしているだけ、な例が少なくないような気がしている。(なぜどのような経緯で自分はそのような「恐れ」「欲望」を抱くようになっているのかも省みることができていない)
ただの市井市民や科学ヤジウマとしての感想ならさほど気にはならないんだけど、”専門家を標榜”しておいてその程度であれば、それってはた目にかなり底浅くて見苦しい感じ(閲覧者をなめるなよ)。
仕事場関係&日常からの情報だけで判断すると浅薄に偏りやすいもの。
少なくとも状況を概観し網羅したような関係書をなんぼか見ておいてほしい。
(卵子販売事業に関する記事は 生殖技術内に収録)
ManNotIncluded.com 関連過去記事:
この子の父親はインターネット
精子を「男関与せず/男はカヤの外サイト ManNotIncluded.com」サイトから買いました
2004/01 BBC News Buying sperm over the internet
お母さんはマックユーザ お父さんは「パワーマックG4」
世界初のインターネット精子バンクベビー誕生
「男性は関与せずドットコム」〜 ManNotIncluded.com
2003/08 ★iMac-ulate conception Guardian

2004/05 関連記事追記:
個人意志のたまものとしての子作り
神からの授かりものではない男女産みわけ それを可能にするバイテク
+グレゴリー・ストック
インドや中国のような文化的性比偏向要因はアメリカは持っていないし意外と男の子は嫌われてるし
2004/04 ABCNEWS.com Congratulations! It's a (Insert Choice)!
Technology Enables Parents to Choose Children's Gender, But Should They?
へぇボタン:へぇ〜
と押してみるもよし
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