なぜ人は環境を壊す動物なのか
![]() 「ヒトは環境を壊す動物である」 小田亮著 ちくま新書 筑摩書房 680円 2004/01 [ Amazon ] [bk1] |
無難で淡泊柔和な小田さんの単著第3弾(だったっけ)。進化心理学。
前作(
約束するサル )と本書どっちが(入門者には)オススメかと問われると、前作。
以下この本の欠点いくつか。
●タイトルが不適切
タイトルで「ヒトは環境を壊す動物である」と先に結論を言われたら、読者はその先、「この本にはヒトに環境を壊させないようにするアイデアが記されているんだろうな」という期待を持って読み始めてしまう。
だのに残念ながらこの本には「ヒトに環境を壊させないようにするにはどうすればいいか」は記されていない。「どうしてヒトは環境を壊す動物なのか」その機序説明が延々書いてあるだけ。
私なら「なぜヒトは環境を壊す動物なのか」という書名にするところ。
●紙数が足りない
半分以上が環境問題以前の進化心理学紹介に費やされている。
で、そのあと
「約束するサル」以降の新しい知見やリスク評価、環境倫理、ゲーム理論も紹介されているのだけれど、これかなりはしょられていて、参考文献も併読しないともしくはあらかじめ予備知識がないと、この内容だけでは(新書を選ぶ読者層にとって)説得力不十分で眉唾をつけて読まれてしまいそう。(p.154:血縁びいきを遺伝子と直結させる表現は簡便市井向け出版では不用意ではないか)
新書企画という紙幅の縛りがあったからか、もとよりこの程度の本を編もうと意図したからか。
あと、欲を言えば現時点での環境保護運動系で進化的知見を援用しているものがあるのか否か、環境保護運動系からの進化的知見に対する異議申し立てとかはないのか、そのあたりの状況も記しておいてほしかったけれど、そこまでいくと著者にはもう守備範囲外なのかな。
●誰に読ませればいいの?
進化心理学入門者に勧める本を、という基準で見れば、やや優先順位が低くなる感じ。
環境保護論者にお勧めとも言い難い…環境保護論者に向けてであれば、も少し違ったスタンスで…。
このタイトルの本を手に取る人の多くは環境論争に興味がある人なんだろうけど、そういう人にとってなんらかの行動指針の示唆になる部分はどのくらいあったろうか。いっそ進化心理学はおまけ程度にしてメインをゲーム理論に徹して記したほうが読者の期待には応えられたのえはないかと思う(けど小田さんはゲーム理論は専門じゃないんだよね)。
で、なんでこんな本を書いたのかなぁ、と考えてくると、あ、そうか、進化心理学を探りながら仕事で環境教育の授業を担当している小田さんが「自分の授業をするとき学生に読ませておくと便利な本」を書いたのか。
でもまぁ、何より安い!手軽!すぐ読める!内容的にハズしてはいないところがオススメ。

進化心理学に通じている人には、後半にいくつか日本側の現況が記載あるのでそこをつまむといいでしょう。
小田さんのキャラはけっこう好きです、末尾でポロッと「インチキ大統領」とおずおず冒険してみているところとか。

p.177、ドゥ・ヴァールらのフサオマキザルのその後、こないだネイチャーに意見応酬が載っていたようです。(詳細未読)
フサオマキザルにおける不公平嫌悪研究の検証
2004/03 ★ Nature 428, 139 Animal behaviour (communication arising): Inequity aversion in capuchins?
2004/03 ★ Nature 428, 140 Animal behaviour: Fair refusal by capuchin monkeys
2004/03 ★ Nature 428, 140 Animal behaviour: Fair refusal by capuchin monkeys
Sarah F. Brosnan and Frans B. M. de Waal

2004/12 追記:
広島大・地球資源論研究室の 地球環境学 ・ 環境倫理学

2005/01 追伸:
入門者は同じ著者の前作
「約束するサル」のほうを先に読んでおきましょう。そのほうが充実します。
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