ブッシュマンとして生きる、複数のチャンネルを生きる
積年の思いと思索が詰まっている一冊。
「ブッシュマンとして生きる 原野で考えることばと身体」
菅原和孝著
中公新書 860円
中央公論新社 2004/01

内容の濃さの割にこの価格、コストパフォーマンス優良書。
世界で2番目に難しい、と言われる言語を話すグイの人たち。
彼らと暮らし、言語研究、会話分析から導かれた文化人類学者の思索。
グイの人達の個人名。
未来を思って名づける我々とは大きく異なり、過去の出来事を刻印記念してつけられる。
だから「死んでやる」という名前があったり「ボスを見捨てる」という名前の子がいたり、しまいには「名無し」という名前のお子さんも。
グイの人達の語り。
何度も何度も、過去の同じいきさつを再演し再現し演じ合う日常。
関係の確認。
関係の構築。
演劇やゴシップの進化心理学にも通じうる。
身体論、表象論など大上段に学術した評
「Sound and Fury」
※ 菅原和孝(すがわら・かずよし)
「狩猟民にとっての自然 動物との関わりをめぐって」 @Webマガジン[en]
※ カラハリ・グイの写真を展示している 中川裕研究室
あらびっくり、グイには獲物を表す手話があるんですね。
※命名ルールの考察については
「名前のアルケオロジー」 出口顯著 紀伊國屋書店 1995
もオススメ

グイの人達の女性略奪。
女が足りなければ、近隣から暴力で女をさらってくる。
女の意志は無視。
強姦も常態。
が、昨今の社会変化により、それら所業は許されざるものに急速に変化した。
当事者に拒絶され外部の警察に介入される。
そうした価値観のひずみの中で、自殺するインフォーマント。
彼が親しんだグイの人々は、社会変化、政府の定住政策によって生じた社会関係のひずみに見舞われている。
強いられた定住により、隣接民族との関係が固定化して融通無碍さが奪われる。
貧困劣位というポジションに、杭打たれ、張り付けられる。
人類学者としての究極の理想は「二つの異質な社会における言葉と意味が輻輳(ふくそう)し通じ合うような可能世界」だとする。「経験の孤島」に橋を架ける作業。
等身大の思想。
複数の世界、複数のチャンネル。その隘路を渡り歩く自由、とりなす力。
これは人類学者だけの理想ではないだろう。
いつでも通じることができる異界があれば。

加えて等身大な思想をもう一冊。
社会状況の変化がもたらす悲劇と困苦、その経緯にじっくり焦点をあてて語りあげた本
↓
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「呪医の末裔
東アフリカ・オデニョ一族の二十世紀」
松田素二著
講談社 2003/12

緩やかな地域社会の集合体の間を行き来し、アイデンティティも緩やかに流動する、そんな多文化共生の叡智に富んでいたケニア&中央アフリカ社会。
それが近代化や定住化、金銭システムの導入、さらには内戦によってくさびを打ち込まれ、ずたずたになっている。
市井に暮らし、リアル貧困に苦しむ人々。
文化的つながりを失い、親族のつきあいが貧困によって危機に陥るケース。
葬儀でのトラブル、心のサポートの混乱。
精妙で心暖かいコミュニティが、危機に見舞われるといかに脆く崩壊しすさんでいくか。その中、人はどう耐え対処し回復を目指すか。
p.22「二十世紀という激動の世界史をともに生きた同時代の人間の記録として、アフリカのある一族の人々の経験を、出来る限り等身大の目線で」描出しようとした試み。異文化の異人としてではなく、等身大の人間として異国の他者を描くこと。
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「名前のアルケオロジー」






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