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2004.05.14

フィールドの寄生虫学と死者の数

 一瞬びびってしまったよ、この学問をやると死亡率が高いのかと。

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「フィールドの寄生虫学
 水族寄生虫学の最前線」

 長沢和也編著
 東海大学出版会 2004/01
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 去年読んだ↓が面白かったので↑もマーク&ゲット。
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「さかなの寄生虫を調べる」
 長沢和也著 成山堂書店 2003/06
 寄生生物に限らず、研究も分類もされていない生き物が日本にはまだまだたくさん!  あなたも手軽に貴重な発見報告をしちゃえるかもしれない

 山人よ、なぜ山に登る。それはそこに山があるからさ。
 寄生虫よ、なぜヨソの生物に寄生する。
 それはね、そこに棲息可能な環境があるからさ。

 その場所で、その方法でたまたま殖えることができたから、そこにいるだけ。寄生というくくりさえおこがましい。
 What can be done will be done.
 その環境で棲息しえて、それで繁殖しえるなら、けっこうなんでもありな生物進化の世界。中でも寄生生物の世界はそのなんでもありが極端な形で展開しており奇想天外エイリアン。

 取り憑いた生物の色を変えてしまう寄生虫。
 取り憑いた生物の行動を操作してしまう寄生虫。
 取り憑いた生物の生殖機能を奪ってしまう寄生虫。

宿主オスを改造する寄生生物ウォルバキア Wolbachia
 被寄生体としか交尾できなくなる宿主たち
2004/03  ★ Male-killers on the loose The Japan Times Online
 
2002/07 日本語記事  ★寄生虫は魚を操り人形にする? カワセミに食べられやすくネイチャーバイオニュース

 中には取り憑いた生物を性転換させるものもあり。
 この手の「宿主を操作する寄生生物」の話をいろいろ知りたければ内容的には カール・ジンマーの↓がオススメ。

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「パラサイト・レックス
 生命進化のカギは寄生生物が握っていた」

  カール・ジンマー著
 光文社 2001年(原書2000年)
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 さまざまな寄生生物の棲息様態や宿主の操り方などを紹介。興味深い内容が満載なんだけど、残念ながら訳文がすこぶる読みづらい…

 閑話休題「フィールドの寄生虫学」の話にもどる。

●右画
 この本の主題、「水族寄生虫学」とは:水生生物に寄生する生物を調べ生態を探る学問。
 で、面白い。
 奇想天外な寄生生物の生態ももちろんだが、どの執筆内容も興をそそるものばかり。

 寄生虫の研究は探偵に似ている。
 まずは現場、フィールド。
 魚市場で水揚げをチェックし、磯に日参して変人扱いされ、イルカを追って漁船に乗り組む。
 現場で証拠を採取して、さまざまな記録とつき合わせ、経験と推理を駆使してその寄生虫はどこから来たか、どのような性質を持っているのか、どんな分類が適用できるのか、さぐっていく。
 生態は奇想天外、なぜこんな形になるのか、なぜここに取り付き繁殖できるのか、常識に捕らわれていては皆目先に進めない、ややもすると宇宙生物の研究に近いような様相にも。

 この本で23人も執筆しているので、この分野にはこんなにたくさん研究者がいるのかすごいなぁ、と思ってたら、この分野にたずさわる人間は日本にわずかに30名足らずだとのこと。
 すごい。
 この参加率はすごい。
 この分野の特徴は、相互の研究協力がすこぶる盛んなことなのかな、と思う。
 遺伝子研究とかバイオとかでは、見ていると、競争だの蹴落としだのライバルだの、どうも敵対&欲望&自己中見栄っぱりだらけで、殺伐さにやるせなくなることしきりなのだけれど、その手のドライな分野とは大きく様相が異なる印象。

 競争っけがない。 楽しそうである。

●右画
 未開拓未研究な主題がふんだんで、新しい発見がたくさんある。しょっちゅうほかの研究者の協力を仰いでいる。標本を送ってくれ、種を同定してもらえないか、その調査方法を教えてくれ。濃いお付き合い。
 とても人間くさい。

 で、もひとつ気がついてゾッとしたすごいこと。
 この執筆者23名中、見た限りでは4名が研究者の死について触れている。
 いままでいろいろな分野のいろいろな本を読んできたけれど、ちょっとこの死亡率(というか訃報の登場率)はすごくないか?

p. 67 I氏が学会発表の直前に自殺した
p. 91 参照しようとした論文の著者がキャンプ中に事故死していた
p.134 標本同定を依頼した相手が稀な病で急死した
p.223 研究協力者が交通事故死した

 まず頭をよぎったのが「寄生されたのか?」。
  ・寄生虫には宿主の行動に影響を与えるものがある
という情報があるもので、えらい気になる。

宿主の行動を操る寄生虫
 カタツムリの行動を操作する寄生虫は知られているが、 ネズミの寄生虫にもそのような種類があることが確認された
 人間の寄生虫にも人間行動を操作するものがある?
2000/07  ★ Suicidal rats hint at mindbending parasite THE GUARDIAN 

 フィールドに出る機会が多い分野なので、動物行動学や植物学同様にフィールドで客死することはままありえるとは思う。
 交通事故死はさすがに違うっぽくないか?とは家族にツッコまれたが、↓のような情報もある。

トキソプラズマに寄生されている人、交通事故を起こしやすい?
 集中力を減退させる
2002/08  BBC News Dirt bug link to car crashes

●右画
 この訃報登場率の高さは単に研究者同士のつきあいが密で盛んだからたまたま多く出ただけ、であって欲しいとは思う。

 でも 気に … なるぞ。

 p.188には魚にしかつかないと思われていた寄生虫が、素潜りで潜っていた学生の歯茎に取り付いて血を吸っていたという恐ろしい話も登場する。
 執筆者は「フィールドでは何が起こるかわからない」と書き添えている。

 寄生虫研究は実学。役に立つ。
 生物研究を下支えするし、生物資源管理や養殖業にも重要。
 未開拓な部分が多いし、予想を超えるセンスオブワンダーもたくさんある。地上にいながら宇宙人研究をやっているようなそんな楽しさ、そして人づきあいの濃さがある。

 …ちょっと地味目に命がけかもしれないけれど、そこを差し引いてもお釣りがきそうな楽しさが見える。目指してみると人生グーかも。

●●●小玉7●●●

ネコからもたらされる狂気、という図  自殺行為とトキソプラズマと統合失調症
2006/01 New Scientist 'Suicidal' rats may offer schizophrenia insights
2006/01 EurekAlert Scientists find stronger evidence for link between cat faeces and schizophrenia



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カマキリはなぜ身の危険を冒してまで道路上にいるのか。 カマキリに付き合う時間のないままに、路上のカマキリを見かけることもなくなってきた。 「路上がオスとメスの出... [続きを読む]

受信: 2004.11.14 01:33

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