治療の忘却史 江戸医療再考 病いの世相史
あなたのおじいさんやおばあさんは、あなたに薬草の知恵を伝えてくれましたか?
ちくま新書
「病いの世相史 江戸の医療事情」
田中圭一著
筑摩書房 680円 2003/11
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・江戸時代、無医村どころか田舎にもたくさん医者がいた
・庶民は気軽に医者を訪れていた、医者も無料でほいほい往診に出た
・日々多くの薬草を利用するなど、ふだんの養生、健康法が盛んだった
・平均寿命は思われているほど短くはない、
小児の死亡率が高かった関係で平均寿命が短く見えるだけ
・修験(しゅげん)者は祈祷(きとう)だけでなく、護摩壇(ごまだん)の材料を吟味し
薬効のある燻煙(くんえん)を用いて患者の治療を行っていた可能性
・伝わる薬草の名称は数あれど、
実物はどの植物だったか忘れ去られている例も多し
・文化変革で失われた旧来の「気の病」治療の技
・医者の免許制度導入により不遇をかこつ鍼灸(はりきゅう)治療
著者は、文明開化とともに江戸時代の知恵が否定され。忘却されたことを嘆く。
それはまぁ否定はしないけれど、知恵の忘却は確かに惜しむべきことだけれど、でもちょっと著者さんは江戸時代の医療を礼賛しすぎているきらいもなきにしもあらず。
薬効の分類は 共感呪術や 感染呪術 などにも左右されるし、水銀をありがたがっていたりもするし(生前に水銀をぎょうさん摂れば死体が腐らないので即身仏ミイラ作りによろしいようで)。
まぁ、実際の効用はどうあれ、概念的に「腑に落ちる」のであれば、それはそれでいいのかもしれないが。
あと、「西欧と比べて日本は劣るか優るか」みたいな視点もやや気にさわる。発展の筋道や内実は一様ではないものだし、同じレールに乗せて優劣云々してほしくはないわけで。
p.143 1797年の”井戸への投薬”の例をもって「流行病の原因を神仏・悪鬼のせいだと考えているものはいない、飲み水によって伝染すると考えているのだ」とみなすのはなにやら根拠浅薄な気がする(もしくは説得力が足りない)。そも、薬と札(おふだ)の観念的差異が当時どのくらい明確にあったのかも、さだかではないわけで。
とはいえ、日本の多くの人が、わずか数世代前の知恵を伝えそこねてしまっていることは首肯(しゅこう)しえる。
先代の知恵が、不当に「知る必要がないこと」扱いされてしまっている。
江戸時代のあなたの祖先はどこに住んでいましたか?
あなたのひいおじいさん、ひいおばあさんは、ふだんどんな健康法や治療法を行っていましたか?
あなたは先祖の何を受け継ぎ損なっているのですか。
あなたは数世代前の暮らしを不当に蔑んで考えてはいませんか。

ついでに、薬草関連をいくつか。
新薬の宝庫が危ない
海洋生物が持つ未知の成分、生態系破壊で種とともに失われるおそれ
2004/05 ★ Ocean medicines could be lost BBC News
薬草を採りすぎないで! 薬草ブームが薬効野草の絶滅を引き起こす
2004/01 ★ Herbal remedies 'threaten plants' BBC News
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