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2004.05.17

平気でウソをつく医者たち?

 「あなたの病気に意味がある」 でどうにもわだかまってしまった偏った説明をする医者
 これのおかげでいまさらインフォームドコンセントって何?!ちがってない!?という疑問にさいなまれている今日この頃。

「あなたの病気に意味がある」という本の中で、著者は医者ではない人間・患者を「ものをしらない人間」と前提しているのか、正確さを欠いた論を展開している。

「あなたの病気に意味がある」の著者の持論は「医者が患者に安心させる言葉を与えれば暗示で病気が軽くなる」というものらしい。

文化結合症候群多重人格イアン・ハッキングの『一過性精神病』などのように、文化や暗示の影響で形成が左右される病気はある、それは否定しない。

 でも「意味の変換で病態を改善させ患者を楽にしてあげる」ことと「医者側にとって都合がいい意味を患者に押し付ける」ことは大きく違うぞ。
 「あなたの病気に意味がある」の著者ははっきり言ってウソを使っている。(ウソ=ものを知らないうぶな患者さんには 威光暗示で通用するかもしれないが、同業者や異分野の専門家には通用しないコジツケ)
 しかも、そういうウソを駆使することを、著者は「インフォームドコンセントの一環なのだ」とみなしている気配がある。

 インフォームドコンセントを敢えて日本語にすると「納得医療」になるのだそうで。
 良い訳語ではない。

「日本人の脳死観」
p.158
「説明と同意(インフォームド・コンセント)」なる言葉も、元を質せば医学の前進には人体実験が必須であるとの前提があって、なればこそ「説明と同意」があり、これには、「たとえ実験が同意によって始まったとしても、被験者に不都合が生じたときには即時に実験を中止しなければならない」との文面が、世界のインフォームドコンセントの雛型になった憲章にあるはずである。日本にはこの点があいまいなままで「説明と同意」なる語が駆け回っているから、誤解のうえに誤解を重ねて混乱した現在の姿になると考えるのである。

 この「納得医療」「説明と同意」を「患者が納得して文句を言わなくなるのであれば何を言ってもいい」と拡大解釈してはいないか?「医者が患者に安心させる言葉を与えれば暗示で病気が軽くなる」とおためごかししながら、その実は「どうせ患者には深遠な理屈はわからないだろうから、正しくなくても患者に理解できそうな理屈で納得させてしまえ」という姿勢は含まれていないか?
 患者が納得するならウソをついていいと思ってないか?

  パターナリズム という言葉を知らない人はここですぐチェック。マンネリという意味じゃないぞ。

 私がわだかまってるのは「あなたの病気に意味がある」の著者があらかじめ医者と患者の間に大きなギャップがあることを前提にしているところ。
 「意味の変換で病態を改善させ患者を楽にしてあげる」、その意味の変換が、患者にも施療者側にも共有されるものであれば良し。が、そうではなく、「あなたの病気に意味がある」は、インフォームド・コンセントという美名のもとに「医の知識の共有努力」をはなから捨てて「ものも言いようウソも方便」と「医者の側のたてまえ論理を押し付ける」ことをしているように見える。

 これってパターナリズム今どきバージョン?

 以前、体調が悪くて医者にかかったとき、「**すると毎回**で出血するんです」と医者に説明すると、医者のセリフは
  「ありえない」
 目が点になったね。
 あるから説明してるんじゃん!
 なんで患者自身が説明する症状を「ありえない」とのたまえるのさ!
 出血するたびエクセルに詳細に記録とってたの、プリントアウトして持ってきてればよかったと後悔したよ。

 でさぁ。もしかしてこれは治療だったのか?↑これが?
 もしかして「医者が患者に安心させる言葉を与えれば暗示で病気が軽くなる」をこの医者は実行してくれていたとか!?
 「出血はあり得ない」と言えば出血しなくなるんですか患者は!
 ちなみに。これ初診でやられた。信頼関係も何も以前の初診!

 いや、この医者は別文脈のアホ医者だったのかもしれないが、しかし、「あなたの病気に意味がある」流のインフォームドコンセントを実行している医者は、威光暗示で唯々諾々と医者の言うことを呑んでくれる無知な患者以外は、これ治療できなくなるんじゃないか?
 医者の側の論理に異議を申し立てる患者は「治ろうとする気がない」悪い患者扱いされるんじゃないか?
 それ以前に、ウソ説明に疑問を抱く患者はその医者をさっさと見限ってセカンドオピニオンを探しに行くだろう。

 なお、今日読んだ本は
   「「分裂病」の消滅 精神病理学を超えて」
   内海健著 青土社 2003/10
 精神分裂病も近代文化が形成した『一過性精神病』なのであり、統合失調症への呼称変更とともに近い将来軽減変質していくだろうとする。
 説得力あり。病の意味変換はこのくらい真剣におこなって欲しい。
 「あなたの病気に意味がある」でも統合失調症を扱っていたが、 「「分裂病」の消滅」レベルと比較するのもおこがましいおざなりな提示だった。

 で、誰かにお願いしたい。
 インフォームドコンセント(説明と同意)は「ウソも方便」と混同していいのか。
 インフォームドコンセントを「ウソも方便」と混同している医者はどのくらいいるのか。
 「ウソも方便」扱いは医療現場ではフツーなことなのか。
 医者の「ウソも方便」を変だと思う私がおかしいのか。

 インフォームドコンセントの意味がよくわかんないぞ。

困った本:cover
「あなたの病気には意味がある あんな病気にこんな効用」
 高田明和著 カッパ・ブックス 光文社 2004/02
良かった本:cover
「「分裂病」の消滅 精神病理学を超えて」
 内海健著 青土社 2003/10

★この項の続きはこちら →  「心の病と呪と治療 そして納得医療の可否」

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情報庫: 医療   パターナリズム

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コメント

患者の権利についての文書は、ナチスの行った人体実験に対する反省から 作成された、いわゆる「ニュルンベルグ綱領」を発します。 (以下、リンク先は、治験ナビ★患者の為の治験・臨床試験ポータルサイトより)
インフォームドコンセントとは?
→ ニュルンベルグ網領 → ヘルシンキ宣言 →患者の権利章典 → インフォームドコンセント発祥の真実 → 医療におけるインフォームドコンセント →患者中心の医療

投稿 ガネーシャ | 2004.05.17 22:33

一内科医ですが。

>インフォームドコンセント(説明と同意)は「ウソも方便」と混同していいのか。

いけません。


>インフォームドコンセントを「ウソも方便」と混同している医者はどのくらいいるのか。

ほとんどいないと思います。少なくとも私の周りにはいません。インフォームドコンセントを、「ウソも方便」と対立するものと考えている医師はいます。少なくとも私はそうです。だいたい、正式なインフォームドコンセントは文書等で記録を残すものなので、インフォームドコンセントといいつつウソをつくということは考えにくいです。


>「ウソも方便」扱いは医療現場ではフツーなことなのか。

程度の差こそあれ、状況に応じて「ウソも方便」はあります。たとえば、癌で余命が数日の、ご高齢の方が「私は大丈夫でしょうか?」と尋ねたら、私は「大丈夫ですよ。何も心配する事はありません」と言うでしょう。これは、この患者にはインフォームしないことを選択したということになります。それよりは微妙な状況は、根治不能な癌が発見された段階で、本人に告知するかどうかという問題があります。比較的若く、特に仕事などを持ってらっしゃる方に対しては、病状をインフォームするでしょう。ご高齢の方には、特にご本人やご家族が希望しない場合には、告知しない場合もあります。


>医者の「ウソも方便」を変だと思う私がおかしいのか。

たまたまおかしい医者(もしくは相性の悪い医者)にあたっただけではないかと私は思います。雨崎さんと(一見)反対の意見として、

「患者に安心感を与えるのも医者の仕事」
「どうせたいしたことがないならにっこり笑って「大丈夫ですよ」って言ってくれればいいのに」
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=8864&form=list

というものもあります。あまりにも説明し過ぎる事を嫌う方もいらっしゃれば、説明が不足していると感じる方もいらっしゃいます。その辺を臨床医はうまく見極めることを要求されます。雨崎さんの事例や、上記リンクしたapjさんの事例は、インフォームドコンセントや「ウソも方便」が真の問題なのではなく、医師が十分に患者さんとコミュニケーションがとれていないことが問題なのだろうと思います。医師患者関係が十分であれば、状況により、パターナリズムのほうがよい場合もあります。

投稿 NATROM | 2004.05.18 09:48

 ガネーシャ様 NATROM様 コメントありがとうございます。
 これなんで私の中でこじれたかというと、インフォームドコンセントが外科や内科のような治療の場面であるならまだいいんですが、心の治療の場面ではインフォームドコンセントはどう扱われているのか、そこが把握できていないゆえでして。
 長くなるので 「別項に続き」書きます。m(__)m

投稿 amasaki | 2004.05.18 23:15

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