誰か良い倫理の本知りませんか?
日本の倫理学って … もしかしてすごくレベル低いの?
私がたまたまスカを2冊つかんだだけだろうか。
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「倫理力を鍛える Q&A善悪の基準がわかるようになるトレーニングブック」 加藤尚武編著 小学館 2003/06
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「倫理学の時間 「何が正しいのか」わからなくなった人たちへ」 鷲田小弥太著 PHP研究所 2003/06
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一冊目●「倫理力を鍛える Q&A善悪の基準がわかるようになるトレーニングブック」
しょっぱないきなり加藤尚武氏、私怨か何かあるのか、割り箸の是非問答から入る。
倫理と言うよりは と学会っぽいというか、要は「論拠を懐疑的・スケプティカルに検証しようよ」という話をツカミに持ってくる。
その一方で同時に
「あの人の言うことなら信用できる」という基準で情報を選択するのが好ましい
だの、
わざと難しい言い方をする人は信用しない
だの、威光暗示&デマ無防備奨励めいた物言いもなさっている。わけわからん。
で、本の体裁としては、編集者が出した倫理的難問に、一問一人ずつ、さまざまな日本の倫理学者がわずかな紙数で応答したその回答を並べ収録しただけという、なんというかとてもまとまりのないしろもの。文献ガイドもあったりなかったり、ばらばら。

さらにその回答、のきなみ進化倫理も進化心理も知見の気配なし。ゼロ。
ゲーム理論も見てないようだし、文化考察さえもなんのその、カントだのウェーバーだの、主義主張と古代の異人さんばかりおひきになって、こっちとしてはそんなの知ったこっちゃない。実にうちわエートス丸出しで、異分野の知見を総合してくれていない気配。
こんなんじゃ、 人類学屋さんがあきれて逃げ出すのも無理はない、ということになるわけなのか。
ひとつ思うこと。
倫理学は群淘汰を夢見てないか?
すべての基本は個。もしくは意味を発生させ発信する意識のユニット。それのせめぎあい&淘汰。
個の性質を理解せずして、個のナラティブを救うことをないがしろにして、何が倫理か。
もひとつ思うこと。
静的なものは必要なのか? 静的な規範を渇望している?
どこかに線を引いて決めてそれっきり安心できればそりゃいいのだろうけれど、物事も規範も生々流転する。無理に棹さすとすぐ折れる。その流れの先を見るには主義主張や観念論に固執するのではなく、めんどうがらずに今どきの科学の成果を取り入れたほうがいい。でないと何のために異分野が骨を折っているのか、けっこうなお宝がたんすのコヤシ扱いではないか。
少なくとも、絵に描いたモチをモチだと思わせるその実施方法は、主義主張や観念論ではなく、科学によったほうがいいんでないかい。
副題でトレーニングブックだと称しているが、どのあたりがトレーニングになっているのやら。
モヤッとボール24個投げっ

二冊目●「倫理学の時間 「何が正しいのか」わからなくなった人たちへ」
冒頭、動物における倫理から話を始める。
が。
これがまたビミョーに 「ト」 がかかっていて香ばしい。
挙がる例がマンガや小説からだしぃ。
平気で「自然界の掟」という意味不明な想定を振り回すわ、共生関係に過剰なファンタジーを抱いているわ、何なんだろう… と思っていたら、なんだ、この人(札大の教授)どうやらただのエコロジーナルシストらしい。
p.31
大意:エチオピアの飢饉の話。各国がさまざまな援助をしたが、食糧を与えたがゆえに人口が増え、その結果さらに飢饉が悪化するという悪循環が起きた。
このように考えると、人を手助けするとか、支援するとか、ヒューマニズムという温かい心で他民族を援助するとかが、いま、大変むずかしいところにきている、ということがよくわかるだろう。
開発援助、飢饉救済は、必要である。しかし、自立的なコントロール力のない国や地域に援助するのは、問題の解決を遅らせることがある
この表現は適切なのか?
さまざまな援助、と記しておきながら、微妙に「食い物を与えるな」みたいな論法に単純化しすり替えている気配。
援助に二の足を踏ませるような表現に終わらせるのが意図なのか?
具体的に政策援助やインフラ援助などの「より良い方法」も示さずに。
p.39。平気で放送禁止用語をお使いになっている。
倫理の人の言語感覚ってこんなもんなのだろうか。
今後は表現するなら「阪神ファンというアホゥ」という表現にしてくれ。
…で。
いかん。冒頭だけかと思ったが、この本、万事がこの調子らしい。
元は1994年に出した講義本を、このたび改訂新版としてお出しになったのがこの本だとのこと。
その10年間、ツッコめる度胸と裁量のある学生は今までいなかったのかなぁ。
このくだりなんか、読んで思わずフキダシちゃったよ。
↓
p.216
どんな判断であれ、基準であれ、それがどんなに素晴らしく、正しいように見えても、人間の「自然」(本性)に適していなければ、無効であり、有害な結果をもたらす。そして、人間の本性に反する倫理や倫理学が、いたるところで横行しているのである。
この著者、ウィルソンの 「人間の本性について」も読んでいないだろうことに100ペソ。ああ、もしかしたら読んでそのまま20年前の バイオフィリアで停止しているとか?
人間の本性についての最近の科学的知見を調べたことないだろうに。
進化心理学も進化倫理学も見ずによくこのセリフが言えたもんだ。
なんというか、地球が丸いか平たいか宇宙のどの位置にいるのか、という基本的なところをすっとばしてあれはサソリに見えるからサソリ座にして11月生まれを所属させようよ、とか、太陽が欠けたら凶兆にしよう、とか言っているがごとき。これは一冊目の「倫理力を鍛える」のほうにも言えること
うわ〜、しかし、もしかして、こんな倫理学の人たちが 日本のヒトクローンの方針策定にたずさわっているんだろうか。
アメリカでは、生命倫理(大統領評議会)に進化心理学者(ピンカー)を招くなど、それなりのことやってた上でのあの状態なんだが、それよりはるかにお粗末かつ西洋の金魚のフン状態だったりする?
なんかコワ。
さても、進化学門外漢である倫理学徒さんたちにオススメしやすい書籍はどのあたりだろう。
まずは ゲーム理論から接してもらうのがいいかな?
「徳の起源:他人をおもいやる遺伝子」
「ゲーム理論で解く」
「進化ゲームとその展開」
そのほか、良い本はいまどきたくさん出回っている。
人間の本性をしっかり踏まえたいなら 進化心理学。
ゲーム理論と進化心理学を取り合わせた 「徳の起源」 がやはりイチオシになるのかな。
なお、日本の進化倫理で頑張ってる 内井惣七氏、この人が書くものって内容はイイらしいんだげど、たいがい異分野の人間に勧めるにはツライ難解さ。異分野が利用してなんぼの進化倫理学なんだから、もうすこしこれなんとかしてもらえないだろうか。
この項の続き: 倫理とゲーム理論と災害心理
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コメント
いつも楽しく読ませて頂いております。
倫理学の本ですが、永井均氏の本とかがよいと思われます。
倫理とは何か―猫のアインジヒトの挑戦
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4782802099/qid=1088872298/sr=1-3/ref=sr_1_10_3/250-1696691-7093043
倫理学の歴史とか、ちゃんと教科書にもなる作りにもなっていて、
それでいて日本の倫理学なんて全然ダメじゃんってことも言ってます。
進化倫理学とかそういう視点はなく、
今日的に具体的な問題に応用できそうな思考はないのですが、
結局は個の視点から見たら倫理なんて欺瞞でしかなくて
その欺瞞を成立させるのが倫理なんですよって感じのことを
ちゃんと言ってるっていう反倫理的な本ですが、
とても論理的に書かれているのでお勧めだと思われます。
それでは。
投稿: norahigure | 2004.07.04 01:45
norahigureさま
ああ、永井さん! そういえばそういう本を出してた。
彼は内井氏もいた進化心理学の某通信網に参加なさってましたし、ひととおり進化心理学も進化倫理学も踏まえてた上で記しているものだと思います。そう、個からすれば倫理はただただ迷惑な十把一絡げ。
ツボな本をご紹介ありがとうございます。
近日中にゲットして読んでみますね。(う”、市内の図書館に蔵書なし)
(でも永井氏は政府の生命倫理策定に引っぱり出される人材ではなさそうですよね:やっぱ生命倫理策定の場に召集される倫理屋さんってダメダメ?)
投稿: 雨崎良未 | 2004.07.04 05:58
お返事(?)遅くなり申し訳ありません、
レスして良いものやらよくわからないのと、猛暑でパソコンが壊れてまして。
えーと、あれから再読してみました。
日本の倫理学ダメダメって言ってたのはこの本ではなかったです。
『<こども>のための哲学』の後半(というかp168)で、
大学で倫理学を専攻したときの違和感とか失望感とかに
ちょろっとだけ触れてありました。
記憶違いしてたので訂正いたします。
そうですか、永井さんは進化倫理も踏まえてる方だったんですね。
でも、永井さんはそういう科学の知見と取り入れるのは
無粋だって考えるタイプですよね。
純粋に論理的に考えるから面白いんであって・・という。
えーと、頭回ってないので気の利いたこといえません。
また時々コメントさせていただきます、よろしくです。それでは。
投稿: norahigure | 2004.07.12 23:31
情報ありがとうございます。
いや、こっちも頭ぼけていたかもしれません。
前言した進化心理学の情報交換場には永井さんはいなかったらしい。(爆)
投稿: 雨崎良未 | 2004.07.13 05:33