遺伝や性淘汰進化トリビア満載
これは使える本だなぁ。性淘汰や生態系の小ネタがたっぷり。
「遺伝学でわかった生き物のふしぎ
重さ100トンのキノコ、ダンゴムシの男女比、性転換するカサゴから、赤ワインで有名なあのカベルネ・ソーヴィニヨンのあっと驚く血統追跡まで」ジョン・エイバイズ著
築地書館 2004/01
(原書:2002/ Genetics in the Wild)
[ Amazon ] [bk1]
原題はシンプルに「野生の中の遺伝学」みたいな。
邦題はえらいアコギでベタな感じになっているけど、これが意外に中身にふさわしい。
たくさんのエピソードが収められている。
どれも(ちょっとむりやりっぽいのも混じっているけど)遺伝子解析がらみ。
どれも2〜3ページですぐ読み終えられる軽い記述。(全部で92本だそうだ)
どれも比較的新しめの研究報告を元にしていて新鮮。
う〜ん、なんともポップな才能に恵まれた学者さんだ。
で、前半に納められているエピソードの多くは 性淘汰がらみ。その性淘汰の妙が面白くて遺伝学の細かいことなんかどうでも良くなってしまいかねないような。性淘汰について講義することがある人あたりはこれ話のタネの宝庫かも。

一腹の子供がみんなクローンなアルマジロ。
平気で処女懐胎するトカゲ。
妊娠にセックスは必要だけどそれでも処女懐胎になる魚。
雌雄同体で独りで繁殖できる魚。
体内に溜めておいた数年前の精子で繁殖できる生物各種。
おいしいなぁ。
私的にはこれ遺伝学の本としてではなく、性淘汰の本として推してみたいところ。
ほか、宿主の性比を左右する寄生虫 ウォルバキア。
他人の受精卵をせっせと集めて子育てにはげむオス魚。
What can be done will be done.のオンパレードで、しまいには何が自然界ではタブーたりえるのかほとほと幻惑されかねない。

後半には島の生態系の脆弱さ、環境破壊と自然保護にまつわるエピソードも並びます。売られているクジラ肉の正体は何か、補食生物の腹の中身は絶滅危惧種なのかどうか、さまざまな謎を遺伝子解析で解明する。
もちろん、進化系統樹解明の話も各種収録。ゾウさんの親戚はネズミ(みたいな動物)だよ、とか。
収斂進化、 適応放散の好例もあり。
なお、語りはシロウトさん向けで平易かつおもしろ楽しく記してあるが、巻末にはきっちり各エピソードの参照論文リストが収録されていて通な人にもちゃんと便利なようになっている。
それにしても、原書から移されたたくさんの挿画がとても美しい。
ヴァージル・フィンレイとか細密ペン画は私的にツボ。
内容に苦言を呈するならば、例のごとく物言いが「戦略を編み出して」云々だらけになっているわけで、 「いったいどこの誰が戦略練ってるってぇのさ!」 という話になるのではありますが。
ん、読んでて楽しい本です。
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