人類にとって戦いとは
古代のいくさの姿、明らかになったこと不明なこと種々あれど。
「人類にとって戦いとは 2
戦いのシステムと対外戦略」国立歴史民俗博物館/監修
東洋書林 1999

研究の深浅が、遺留品の残存度に大きく左右される。
一世紀以降の時代より、一世紀以前のさらに昔の時代のほうが「古代の戦闘」の研究が進んでいるとのこと。甕棺葬(陶器のでかいツボに死体を入れて埋める)がすたれて遺骨が残りにくくなる、青銅の武器がすたれて鉄製の武器が増える(青銅なら骨に戦闘時の破片が残るので武器の様態を調べることができるが、鉄になると跡が残りづらくてさっぱり)、などのゆえ。【p.22藤尾慎一郎】
投擲や弓矢などの遠隔戦では「英雄」は生じない、斬ったはったの近接戦用の武器の存在があるならば「戦闘指揮官」やら武闘有力者やらが存在したと推察しうると。【p.19藤尾】
これにしても近接戦用の武器が後世まで残る材質だったかどうか、が影響したりするんだろうなぁ
p.261【松木武彦】4世紀百済では武器の副葬があまり見られず探りにくいとのこと、これは”近接戦が少なく栄誉と戦闘の関係が薄かった”のか武器に副葬に適さぬ意味が付与されていたのか、単に”残りにくい材質”だったのか…。

8世紀の律令群制度の話が、なんかすごい。当時の全国推定総人口500〜600万人に対して総兵力20万人と。小隊大隊と組織階層化され、兵員は一年のうち2ヶ月訓練に従事する。戦争になれば軍団全員動員。その組織様態の子細もかなり詳細に解明されている。
これだけのばっかでかい軍隊が、さても当時何に対して必要だったのか:駐留唐軍対策にいっぱいいっぱいの新羅が、後ろの日本にまではかまっていられないので毎年日本にみつぎものを送ることを始めてしまった、新羅側はそれやめたいけど日本が脅かすのでやめられない、そんなこんなの緊張関係が中央集権体制の結束を進め巨大軍隊までも組織させたと。【下向井龍彦】
源平戦など日本中世の戦闘を語る【高橋昌明】、実戦上の鎧(ヨロイ)扱いの心得、弓矢での戦闘の限界、馬上戦では刀は(抜くとき馬の首や手綱を切りかねないので)最初から抜き身で参じる者がいたり、切るよりはまずごつい刀で相手の頭をぶったたいて落馬させることを狙ったり、しいては馬が狙われやすかったり馬上の不安定さがたたったりで戦国期には下馬しての戦いが常識になったこと、弓矢戦も高い比重だったのに斬ったはったが多かったのは功労の「首取り」の必要があったからゆえ、などなど へぇ〜 がいっぱい。

「人類にとって戦いとは」のシリーズは
「人類にとって戦いとは 1
戦いの進化と国家の生成」
国立歴史民俗博物館/監修
東洋書林 1999
も既読。

こちらは【高畑由起夫】氏が「競争・争い・暴力の進化 ヒト以外の霊長類の場合」を語っているなど、少し進化心理学系が前に出ている巻。
チンパンジーで観察された子殺しのタイプ3種類など。
末尾の総合討論では「人間に系統的に近い動物になればなるほどヒューマニスティックとは言い難いような残虐な行動が見られるようになる」という現場の感想も登場する。【高畑】
ネアンデルタールの絶滅についてもひとしきり。適応値が一パーセントあるいは0.1パーセントでも違えば、数千年のあいだにがらっと人口が逆転しまうという指摘も。【馬場悠男】
ボディ社会(@エチオピア)は首長の交替時期に近隣の農耕民を大襲撃する、これは集団の排他性を示し新たな統一的社会を形成再生する効果があると見ることもできる、とされる。しかもこの社会、「倒す」、「追う」、「追われる」という概念はあっても「勝つ」「負ける」という概念がないとのこと。【福井勝義】
かくのごとき意味体系の中ではそも「闘い」や「戦さ」という概念が大幅に様相を異にしていることも考えられるわけで。
勝ち負けという概念が通文化的ではないようだというこの事実、ちょっと肝に銘じておいたほうがいいかもしれない。

2004/09追記:
「人類にとって戦いとは 3
戦いと民衆」国立歴史民俗博物館/監修
東洋書林 2000年
傭兵が略奪で私腹を肥やすのが当たり前だったという、戦国の世の習わし。
いくさと聞けば、傭兵のみならず略奪品を買い取り兵糧を売りつける商人も大挙して押し寄せたという。
戦場の維持に、あきんどたちは必要不可欠だった。
日本兵は、とにかく他国の兵に比べてものすごくよく「日記」をつけていた。
日本兵の日記を調べればいとも簡単に日本軍の動向について情報収集することもできてしまってた。
また、降伏の定義が、捕虜の定義と扱いが、国によって大幅に異なっていたという事実。
降伏という選択肢を奪われていたゆえに、玉砕憤死せざるをえなかった日本兵や植民地の人々。

シリーズ「人類にとって戦いとは」全5巻 東洋書林
1
『戦いの進化と国家の生成』
2
『戦いのシステムと対外戦略』
3
『戦いと民衆』
4
『攻撃と防衛の軌跡』
5
『イデオロギーの文化装置』
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