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2004.08.18

スピリチュアリティと医療と心

 さても、これは「スピリチュアリティ」という呼称でほんとうにいいんかいなと思うことしばし。

cover

「スピリチュアリティの現在 宗教・倫理・心理の観点」

 湯浅泰雄監修
 人文書院 2003/10


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目次

湯浅泰雄「霊性問題の歴史と現在」
永見勇 「スピリチュアリティとキリスト教ーー身体性と三位一体論の関連を通して」
島薗進 「先端医療技術の倫理と宗教 −− いのちの始まりとスピリチュアリティ」
葛西賢太「「スピリチュアリティ」を使う人々 −− 普及の試みと標準化の試みをめぐって」
大宮司信・村田和香「精神医学とスピリチュアリティ」
渡辺学 「ユングと自己のスピリチュアリティ −− 自己の四つの位相ををめぐって」
岡野治子「フェミニスト神学の視点から社会倫理を再考する −− スピリチュアリティ・平和をめぐって」
宇都宮輝夫「人生物語としてのスピリチュアリティ −− 現代医療の現場で」

 WHO(世界保健機構)が「健康」の定義に「スピリチュアル」なる概念をお含ませになったと。
 強引&中途半端な印象は否めない。
 精霊も、マナも、おかげも、ピーもなにも、なんでもかでも「スピリチュアリティ」で済まされかねないような。

 あらゆる文化習俗の「西洋医療基準から見るとアノマリーとみなせる医療」”霊的な”とみなせるものを「スピリチュアリティ」でくくってしまえるのかといぶかってしまう。
 方策上、仕方なく便宜的に設定する、のであれば、それこそきっちり便宜上の設定であることを見失わないためにも、何が共通し何が共通しないのか、進化心理学や宗教人類学などをも織り込んで十全に云々していただきたいところだろうに、どうも「はなから西洋的先入観を被っております」な感じがつきまとう。

 仕方ないことはわかる。ないよりはあったほうがいいだろうことは首肯(しゅこう)する。妥協上の必要悪?
 でも「世界保健機構」が音頭をとるのも、なんかちょっと気持ち悪い。見た目がトップダウンだから気持ち悪いのか。

 なんだろう、スチュワードシップみたいな、一種 パターナリズムみたいな感じがするのかな。
 異文化の管理を西洋人がいたします、みたいな。

スチュワードシップ:
 私の友人のところに、霞が関から深夜電話がかかってきました。「地球環境の国際会議で、条約の案文にstewardship と書いてあるけれど、何のことかよくわからない」というのです。困った役人は、ロンドンから本省に電話し、本省でも誰もわからなかったので、とうとう友人のところに電話がかかってきたのです。
 
 stewardship は「管理責任」と訳しますが、神が世界を創造したあと、その管理を人間に任せたという聖書の記事が背景になっています。要するに、人間が自由に自然を利用・改造していい(だから責任もある)という考えですが、ここから品種改良や捕鯨禁止や生物の多様性保護といった考え方が出てきます。驚くべきなのは、日本の一流官庁や国際交渉の担当者が、欧米社会の行動の根底にある哲学・宗教について、基本的なことを知らないという点です。日本人は、人間も自然の一部と考えるので、 stewardship の考え方はなじまない、案文から外してくれ、と交渉することも考えつきませんでした。

〜p.18 橋爪大三郎著「世界がわかる宗教社会学入門」筑摩書房 2001年

 ん〜、ニューエイジ方面のわけわかんなさも、キモさに輪をかけてくれている感じがする。
 今どきの流行り系スピリチュアリティは、複数文化の混淆(こんこう)になっていることが多い。いわゆる「作られた伝統」のような様相。
 古来の(もしくはヒトの共同体になじんでいた期間が長きにわたる)スピリチュアリティは、それなりに人心&環境と共に進化適応し安定していたろうもの。と同時に、ヨソの人心や環境には安易には適用できない脆弱さも持つ。
 それらと、タフでにわか伝統の新興スピリチュアリティをいっしょにくくってしまうであろうところも、なかなかに気持ち悪い。

挿画

 トランス云々の話も含めるとなると、扁桃核や側頭葉とかの「脳内宗教機構」検証とかも必要なんだろうな。
 日本のトランスパーソナル屋さんはこの手の流れには噛めているんだろうか。

 心身非二元論とか、嫌悪忌避感情の進化心理学とか、多様な分野の知恵を結集すべき課題であろうところ、この本に収録されているメンツの視点では物足りない。
 というか、日本には人材が不足している/もしくは日本的になじまない主題?

 心の状態が身体状態と密接に関係していることは否定しない。
 が、心の状態がすなわち宗教感覚に左右されるにしても、それがスピリチュアリティの設定を必要とするのか、という部分でビミョーに飛躍を感じる。

死別の悲しみの中、信仰心の厚い人のほうが健康を損ないにくい
2002/08  ★ Good grief: Religious people may have better health while mourning EurekAlert!
 
信心でアップする心肺健康度
2001/12  ★ Rosary prayer leads to healthy heart Ananova
 
医療における信仰の重要性
2001/12  ★ Study, review and editorial focus on religion, spirituality and medicine EurekAlert!
 
祈ってくれる人がいると回復が早い@心臓疾患
2001/10  ★ Power of prayer may help heart patients recover Ananova
2001/10  ★ Prayer, noetic studies feasible; results indicate benefit to heart patients EurekAlert!
2001/11  ★ Heart patients 'benefit from prayer' BBC News
 
子供が欲しけりゃ祈ってもらいなさい  体外受精の成功率が倍になるみたい?
 本人には知らせず「妊娠しますように」とお祈りをしてみました
2001/09  ★ Prayer may influence in vitro fertilization success EurekAlert!
2001/10  ★ Study finds prayer 'doubles chance of IVF success' Ananova
2001/09  ★ The Nature and Nurture Of a Fanatical Believer washingtonpost.com
 
祈れ、されば救われん
 患者のための祈りは半数以上で快復になんらかの効果があった
 ただし、患者本人が祈りを知らない場合は効果が薄い
2000/06  ★ Prayer 'works as a cure' BBC NEWS

関連エントリ:
 → お笑いと健康 「お笑いの科学は世界を救う」
 → 楽天さと健康 「ポジティブ人間は健康も上向き」


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