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2004.08.17

自殺、科学、宗教、血液型

読了2冊:
「自殺死体の叫び」 上野正彦著 角川書店 476円 2003/08(旧版2000文化社)
 著者はこれを読んで自殺の実態を知って自殺を思いとどまって欲しいと案じている。
 残念ながら、メンタリティが著者や自殺企図のない人間とは別のフェーズに入っているからこそ人は自殺企図者になるのであり、かような情報も自殺企図者が「劇的リアルに直面しない限り」さほど抑止力にはならないのではあるが。

「魔都」 久生十蘭著 現代教養文庫 社会思想社 1976(昭和13年作)
 文芸や小説にはうといのでアレなんですが、戦前のテレビメディアがなかった世界、それでいて舶来カタカナ語が豊富に登場する、覇気と剛胆と数奇の交わる不思議な異世界、これがじいちゃんたちが生きた時代だったんだなぁ、とか…。
 前に読んだ同時代の作品: 牧逸馬著 「第七の天」に忘れがたいくだりがあった。

p.217
 科学は、いかにそれが解釈好きで出しゃばりのちょ小才/こざい/なお爺さんであろうとも、人間を「?????」の海から救い出すどころか、かえってよけいな征服感を抱かしめることによって、じつに残念にも--まったくいりもしないおせっかいだったと言わなければならないが--人に常識という小さな世界を与えて、そのなかでしたり顔をする余裕をもつべく教えたにすぎなかった。その証拠には、この科学時代の近代人ほど、わるく安直に満足しきったたましいは歴史始まって以来ないではないか。
 
p.219-220
あんまり安価な智識に満足して、科学によって四六時中自分たちが創造しつつあるこの近代的のものの怪を軽く見ないがいい。宗教は外部の怪異に対して自分を適合/アジャスト/させようとする涙ぐましい勤労だから、これほど「物」が複雑化しているこんにち、われわれはいっそう多くの宗教的片鱗をわれわれのまわりに見出さなければならないのだ。礼儀・流行・恋愛・禁喫煙・断髪・道徳・不正・口紅/ルージュ/・速力など、すべてこれ歴史的な運命を背負わされたわれわれの宗教である。なんとなれば、われわれはこれによって環境とわれわれの存在とを接触させ、結合させて、そこに、この瞬時の外界におけるわれわれの地位をかろうじて確認した感激を味わいうるから--。

 俺が生まれる前から、言いたいことは先人によって記されている。
 人が何をどうバリエーションさせ再生産し発信しても、通じるのはわずか。
 人が何をどうバリエーションさせ手を変え歌い叫んでも、残るのはわずか。
 努力を楽しもう。結果ではなく経過を楽しもう。スリルと変転。物語はそこにある。

 人間が扱える情報量には限度がある。
 その限度の中であれこれ都合をつけるには、マナや偏見やらの「正しくはないが必要悪もしくはスパイスとしての」クッションなり輪ゴムなりが必要なわけで:ヒューリスティクス。
    → 『共感能力と下層階級 偏見、信仰、ヒューリスティクス』
 科学は人間の日常知に適応的ではない情報あつらえになっていることしきり。
 人の暮らしに適していないものを押し付けておきながら、受容できない人間を貶めるような言動をする自称進歩側の人間には呪いあれ。
 科学の皮をかぶった偏見の押しつけにも不幸あれ。


 ついでに、これも置いておこう。

「心理人類学:その歴史と連続性」 フィリップ・K・ボック著 棚橋訓(さとし)・白川琢磨訳 東京創元社 1987(原書1980)
p.27
社会成員が、科学的思考に繋がる見解を保持しているかどうかによって、文明人の心性と未開人の心性を区別しても、そこから、複雑社会の全成員が、思考の全領域において等しく合理的であるという仮定を導くことはできないからである。現代文化の科学的部分は、高度な訓練を受けた研究者の比較的小さな一団によって担われているが、彼らのうちの多くは、自身の思考においてはかなり非合理な側面を露呈しているのである。(例えば、占星術や、輪廻転生に関する根拠のない観念を信じるなど)

 非科学的科学者といえば。
 最近で目立つのは血液型性格判断ニューバージョンの台頭。
  「進化医学」を流用こじつけし、ひところのトンデモ進化心理学のような様相を呈している。
 このニューバージョンを鵜呑みにする人々の存在と、それが教育現場に与える影響についての危惧があちこちでささやかれている。
 要するに「他者を型にはめて安直に評価判断処理する」=偏見。それが科学の皮をかぶっている。科学のふりをした偏見助長
 人の個性とは何か。要再考。


へぇボタン:へぇ〜 と押してみるもよし


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