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2004.09.24

憎しみと攻撃の心理・進化・社会

死刑じゃ犯罪は減らせない。自殺も殺人も「憎しみ」のなせるわざ。

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「人はなぜ「憎む」のか」  ラッシュ・W.ドージアJr.著 河出書房新社 2003/07 (原書2002/Why We Hate)
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「攻撃の心理学」  B.クラーエ著 北大路書房 2004/04 (原書2001/THE SOCIAL PSYCHOLOGY OF AGGRESSION)
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「人はなぜ「憎む」のか」

 「意味体系」が人間にとって致命的であるというのはすこぶる首肯(しゅこう)もの。
 進化心理学を中心に据えて、一般向けに社会がらみに我々の性向について述べた啓蒙書、みたいな。
 やや科学的正確さを欠いているかなみたいなはしょった部分も見受けられるけれども、書き手的には読者層の想定と目的を勘案するとこのようなスタンスで走ってちょうどいいくらいかなと思いました、という感じか(生殖還元主義みたいな)。一歩踏み外すと脳内革命のごとき「ト」に陥りかねないが、まぁなんとか。(偏見の生物学的正当化ってヤだよね)

 で、入門者を視野に入れている書き方らしいので、”進化心理学を援用した常識の解釈し直しレッスン”みたいな記述が多く見られる。
 憎悪の生物学的位置づけ、恐怖症や偏見の機序、さらにはバイオ、ゲノム、生命倫理にジェノサイド、自殺に躁鬱病に摂食障害、人種差別からさらには青少年の暴力までやや風呂敷広げすぎという観もなきにしもあらず。
 近々の事件、9.11やコロンバイン、イラク戦の事例などを折々にはさんでうまく読ませる。
 登場する学者の名もビッカートンからニスベット、ダマジオ、ウタ・フリスなど、最適かどうかはさておきひととおり材料は揃えている感じ。

 で、いろいろ啓蒙的に論を展開してくれるけれども、ではどうすればよいかという点になると、どうも宙に浮いた理想論でお茶を濁しているような感じが。ラストは畢竟ガンジーとキング牧師とジョン・ヒュームでオチをつけてしまっているし。
 とりあえず「憎悪を最小に食い止める10の方法」「原始的な心の七つの特徴」あたりはチェックしておくと吉。

 進化心理学における感情解釈や人間行動解釈というものにはこんなパターンがあるんだなあ、と見ておくには便利な一冊かな。

●●●小玉7●●●

「攻撃の心理学」

 やや専門家さん向け。一般向けの体裁ではけしてない。

 冒頭あたりで攻撃の生物学的説明と心理学的説明をそれぞれまとめてあるのが重宝。生物学的説明の中には動物行動学、社会生物学(進化心理学)、行動遺伝学が含まれる。
 あと、人間の成長過程における攻撃行動変化、攻撃行動と性差、攻撃行動と気温、メディア上の暴力表現が人間行動に与える影響、学校や職場でのいじめ行動、集団暴力、殺人、家庭内暴力に性的虐待、レイプ、等々ひととおり、人間の攻撃的行動についての知見とデータがそろえてある。これらについて何か言及したいとき、踏まえておくべきデータはどのようになっているのかこれでチェックしておくと便利&安心かもしれない。

●●●小玉7●●●

 おしむらく、上記2冊にはゲーム理論的な視点は登場しない。
 ということで、ゲーム理論込みの
  マット・リドレー 「徳の起源:他人をおもいやる遺伝子」
を併読ぜひオススメ。


へぇボタン:へぇ〜 と押してみるもよし



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