アニマルセックスアドバイス
非常に正しいセックスアドバイスを久々に読んだ。
「ドクター・タチアナの男と女の生物学講座
セックスが生物を進化させた」
オリヴィア・ジャドソン著
光文社
2004/02(原書2002)
ここで私が言う正しいか正しくないかは、「個体の動機と進化上の結果を混同しているか否か」に尽きる。
この著者は
「こうしてメスは繁殖率を上げようとしているのです」
「オスの編み出した戦略はみごとにメスを欺きました」
「自分の食いぶちを増やそうとして兄弟を殺すのです」
のようなNHKの自然番組あたりがよくたれ流している真っ赤なウソッパチをいっさい排除してくれている。
えらい。
正しいっ!
見習えっ!!! 参照: 「弱肉強食か平和主義か」

生物には、**なときに●●な反応をするような性質が、種々いろいろたくさん備わっている。
その性質を、人間側の解釈で勝手に「〜〜しようと思って努力しているのです」と、やってもかまわない部分は、あるにはある。
が、勝手な解釈が高じて「自分の願望や自分の価値観を動物行動の解釈にまで投影する」、それがいけないことだということがわからなくなるまでに至ってしまったら、テメ頭冷やせや顔洗って出直して来いやと言いたくもなるわな。
※悪い例: 「父親の進化」 これ読んだときは腹立ってぶん投げたくなった
この「ドクター・タチアナの男と女の生物学講座」にはそういうアホさは全然ござらぬ上に、一般向け性淘汰講釈本としては中身の水準もすこぶる高い。 フェミニズム科学 的にも十分合格点。
コンセプトの割に、装丁も「買っても恥ずかしくない」抑えたデザインで(抑えすぎかな、原題は「すべての生き物にささげるタチアナ先生の セックスアドバイス」)、ともあれ、とても皆様方に推薦いたしたい一冊。

一応、この本の最大の特色であるコンセプトを紹介しておくと、中身は
架空の先生がひらいた動物たち向けのセックスお悩み相談所
であったりするわけで。
ゾウが「先生、ぼくのペニスが緑色になっちゃいました!病気でしょうか」とか。
カマキリが「先生、エッチの時に彼氏の首を切ると気持ちがいいんです」とか。
シデムシが「彼女の性格が急に小姑以上に怖くなったのですがどうしたのでしょう」とか。
ウニが「ぼくの精子を流行遅れのやぼてんにしない方法はありますか」とか。
マナティーが「息子がホモっぽいので困っています、なおせますか」とか。
で、その人間の常識からぶっ飛んだ質問に対して、タチアナ先生がどこぞの紙面の人生相談よろしく、セックス相談室長として親切にアドバイスを説いて下さる。
そのアドバイスには、最先端の 性淘汰研究から導かれた知識がふんだんに盛り込まれている。
数千万年、クローン繁殖だけで、セックスなしでやってきた生物。
セックスと遺伝子交換は別の話になっている生物。
兄弟としかセックスしない生物。
性別がオスメスの2種ではなく500種類もある生物。
メスがおちんちんでセックスをしておちんちんで子供を産む生物。
自分の身体よりはるかに長い精子を作る生物。
ほんとうに貞節で一夫一婦制を守っているレアな生物。

p.221の「姓とY染色体が一致する話」
2000/04 BBC News Surnames found in DNA
ただし。
私的には、この一般人ウケをねらって脚色したタチアナ先生のお答え
「あなたの恋人は嫉妬に狂っていますね」
「あらあら、誰もあなたに女性らしさを期待してはいませんよ。」
「悪いけど、あなたはもうおしまいよ。人生は不公平なのよ」
とかいうウィットに富んだ言い回しが妙にじゃまになっているのか、内容は面白いのだけれど、読むのに他の本に比してやたら時間がかかってしまった。
ちょっと文体と読み手の相性に向き不向きがあるかも。

で、性淘汰といえば。
前に紹介した「遺伝学でわかった生き物のふしぎ」は、オチャラケは少なく、事例もふんだんで、各々の項目は短く読みやすい、という点で、この「ドクター・タチアナの男と女の生物学講座」と読み合わせるのにとてもオススメ。
この2冊を制覇すれば、ちょっとした性淘汰ウンチク家になれそう。
両書、何件かとりあげる生物の事例が重複していることもあり、よりよい勉強になると思う。
買っても恥ずかしくない本で、ハイセンスなシモネタを仕込めるってのはけっこうおいしい話かもしれないですな。(というサラリーマン方面向けな物言いもたまにはしてみよう)
なお、この手の本は、人間の実際の性生活にはほとんど参考にはなりませんから、残念!
※ 自然主義の誤謬
へぇボタン:へぇ〜
と押してみるもよし
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/863/1686992
この記事へのトラックバック一覧です: アニマルセックスアドバイス:







コメント