気前良くても粗訳の本
またつまらない本につまずいてしまった。
「気前の良い人類
「良い人」だけが生きのびることをめぐる科学」
トール・ノーレットランダーシュ著
山下丈訳
アーティストハウスパブリッシャーズ / 角川書店
2004/07(原書2002)
[ Amazon ] [bk1]
「ユーザーイリュージョン」 の著者の作品。
だから中身はそんなに悪くはないはず。
だろう。
なのに。 訳で読めない。
なんでこんなことになっているんだ。
中身はゲーム理論や性淘汰や進化心理学でヒト行動を展望する、という趣向らしいのだが、この訳者、進化学も進化心理学も全然知らずに手をお出しになったらしい。
ラポポート(ラパポート)、トライヴァース(トリヴァース)、進化上の安定戦略(進化的に安定な戦略:ESS)、相互的(互恵的)、性的な選択(性淘汰)、「三番目のチンパンジー」( 「人間はどこまでチンパンジーか?」 )、シクゼントミハリ(チクセントミハイ)、ランドルフ・ネッセ(ネシー)、「発情する心」( 「恋人選びの心」 )…
ちょっと検索すればすべて訂正できるだろうに。
何も調べていないというか、識者の知人も問い合わせ先も互恵相手に持ちあわせていなかったというわけなのかな。いや、もともと進化学や進化心理学に興味がないのか。訳者は商法系の弁護士。マーケティングの興味で手を出した、基礎や論理を踏まえることには用はなく、生業で使えるツールを探しているだけだった、ゆえに生物学方面なぞ調べる頭もなく。か。
この訳のダメダメさについては アマゾンの書評者もグサリくさしていらっしゃる。
あ〜あ、利他行動研究に関して推薦できる本かな、と思って覗いてみたのに…。

p.141:カナザワ・サトシの研究(有名な歴史学者280名調査)について述べてあるけれど、
ピークは三十路、やもめだと長続き
科学者と犯罪者の共通点 伴侶がいないと逸脱性が高まる?
Satoshi Kanazawa +ロビン・ダンバー
2003/07 Nature Science Update Scientists, like criminals, peak at 30
Study hints that men strive to win women and then sit back.
2003/07 ▼韓国語和訳 中央日報(Naver経由)
2003/07 New York Times Prime Numbers: What Science and Crime Have in Common
2003/08 Boston.com Do scientists age badly? 〜Satoshi Kanazawa@ロンドン
A researcher says marriage ruins a beautiful mind
この本「気前の良い人類」は原書は2002年だよね。
カナザワの上の研究は2003年の発表。
この前にもカナザワは同趣旨の発表をしていた?
それとも訳者が独自の判断で書き加えた?
2003年はカナザワの所属はカンタベリー大、p.141ではペンシルバニア大らしいので、調査対象も微妙に違うようだし、やはり時期が違う話か?
あ。見つけた。 Kanazawa, Satoshi 。
2000年に↓をものしていた。これのことか。
Kanazawa, Satoshi. 2000. "Scientific Discoveries as Cultural Displays: A Further Test of Miller's Courtship Model." Evolution and Human Behavior. 21: 317-321. PDF
その後: 2006/11 科学の地雷原を走る男:サトシ・カナザワ Satoshi Kanazawa

ついでに。利他行動関係の最近の話題。
スーパーマンのファンは人を助けなくなる
超人と比べてしまうとおのれが役立たずに思えてくる効果
2004/11 New Scientist Superman too super a role model
お急ぎでない方は利他行動の研究もチェックしておくと人生吉かもしれない。
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と押してみるもよし
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