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2005.03.31

世界の言語文化を図鑑にしてみました

世界の言語文化が図鑑になってしまった。
人間が醸した言葉の多様性が美麗なカラービジュアルとともに一望できる。

左◆世界言語文化図鑑
「世界言語文化図鑑 世界の言語の起源と伝播」

 バーナード・コムリー編
 東洋書林 2005/01
 (旧版1999)


各地各国の多様な言語と文化、そしてその文字の紹介はけっこうながめていてあきないものがある。
ここに生まれていたらどうなんだろう。
こんな文字はどうやってキーボード入力するんだろう…?????

回避言語
 特定の親戚と話をするときは、専用の特別な言語しか使えないという文化。
 なぜそんなしきたりができたんだろう。
 その特定の親戚にはどんな役割と意味が与えられていたんだろう。

p.18
オーストラリアの先住民族の言語の中に、ある種の語彙を使うことを避ける回避言語使用域(avoidance registers)を持った言語があった。そこでは、この回避言語は、交際が必要最小限に留められている"禁忌"親族と話をするときにのみ使われる。"禁忌"親族は"姑"にたとえられ、この"姑"とは"姑言語"で話しをするのである。"姑言語"の語彙は非常に制限されており、かなり一般的な単語しか使えない。このことからたいへん面白い疑問が湧く。人々はこのような制限のある言語でどうやって意志の伝達ができるのだろうか。子どもはどうやってその使い方を学ぶのだろうか。社会的関係は、その言語の中でどのように反映されたり強められたりするのであろうか。"姑言語"がすべて消滅してしまった現在では、これらの疑問に答えることは難しい。今なお話されている先住民族の言語であっても、回避言語使用域そのものが伝統的な生活様式と共に失われ、それを知るには年老いた話し手の記憶に頼るしかないのである。

っていうか、「回避言語」も「avoidance registers」も検索しても全然ヒットしないじゃん。whoa
どうなってるんだ?
この本、今年新版が出て、私が読んだのは6年前の旧版のほうなんだけど、旧版は誤訳誤植が少なくないというウワサがあるし、これ用語の解釈間違いなのかな、誰か詳しいこと知らない???

語順と人名
 世界観の違いにもつながるのだろうけれど、主語・目的語・動詞の順になる言語文化圏では
  【苗字が先・名前や肩書きはあと】
だそうだ。
右画 動詞・主語・目的語、という順の言語文化圏では
  【child of X(Xの子ども)】
というパターンの名が多くなる。
 西欧では【名前のあとに姓】が多いように感じるけれど、苗字自体に
  -ova(Gruberova)"Gruberの娘"(チェコ語)
  -dottir(Sigur*sdottir)"Sigurdの娘"(アイスランド語)
  -son(Andersson)"Andersの息子"(ノルウェー語)
のような、かつては【主語・目的語・動詞の順】だったなごりが見られたりするらしい。

子音多すぎ!
 コーカサス地方には子音の種類がハンパじゃない言語があったりする。
 ウビフ語の子音は80種類! アブハズ語のブズィブ方言には69種類の子音!
 おいおいこれ日本語の何倍だ…?
 これ地元の人はフツーに聞き分けているんだよね…。 あなおそろしや。

 おっと、アフリカ・コイサン語族の舌打ち音もすごい。
 80種類もの舌打ち音を持っている言語もあるってか。
 ど、どうやって音を出し分けるんだ?
 聞き分け以前に、こうなると「人間の口から出る音の多様性」に目がくらんでしまうぞ。

p.76 コイサン語族
 この語族に属する言語の多くは、完全に消滅しているかまたは消滅に近い状態にある。ナミビアのダマラ語だけが顕著な数の話し手(163,000人、人口の約10%)を持っている。1990年には、国語として標準化され、コエコエ語と改名された。

ああ、その目もくらむ多様性も、どんどん絶滅していってるのか…。
世界が貧弱になっていく。

p.54
 日本語は、約1億2,000万人の話し手を持ち、世界で第9位にランクされる主要言語の一つである。言語と文化の両観点からすると、日本は一つの国語が浸透した世界で最も同質な言語環境をもつ国のひとつである。方言に関しては発音にかなりの違いがあり、相互理解が不可能なこともないとはいえない。沖縄と近隣の島々に90万人余りの話し手を持つ琉球語は、日本語とは相互に理解が不可能で、それぞれ異なる言語族に属するものと考えられている。

  琉球語は元は日本語とは異なる言語族なのか。
 古語はかなり混淆してるよね。
 ウガンジョ(拝所)、ヤナムン(悪霊)、ヤナカジ(悪風)、マジムン(魔物)、とか古い日本語に通じる単語が普通に出てきたりするとうわーうわーすげーリアル!とか民俗学好きにはたぁまんない世界ですが。

p.102
 言語学者が目をみはるメラネシアの特徴は、言語の極端な多様性である。ヴァヌアツ共和国は150,000人強の人口に105もの異なる言語を持っており、平均すると1,500人毎に一つの言語を有する世界で最も言語の多様性に富んだ国となっている。ソロモン諸島も同様に、言語人口の少ない多数の言語を持っている。90近くもの言語が約300,000人の人々によって話されているのである。

注目すべきは、この極端な言語多様性は【それぞれが隔絶されていて交流していないから】生じているのではなく、頻繁な交易・婚姻を交わしながらも、集落間のお互いのタブーが言語文化の多様性を保持促進していたのだという点。
 そのタブーは、各部族のアイデンティティと結束をこしらえると同時に、その地域の自然保護も担っていた。
 使う言語の種類を減って、言語の多様性が失われると、そこの自然も破壊されていく。 → 「言語消滅=自然破壊」

p.212
 20世紀終盤の数年は、言語の消滅を次々に耳にすることが普通のこととなった。カトーバ語の最後の話し手であったレッド・サンダークラウドは1996年1月に亡くなったが、自分がスー族の最後の話し手であることを意識し、狩や儀式の歌を後世に残るように記録した。これらの記録はスミソニアン博物館に保存されている。ヤヒ語の最後の話し手であり、部族の崩壊後は北カリフォルニアに隠れるようにして生きたイシも、同じように後世に伝える記録を残している。当時、アメリカ先住民族言語研究の第一人者であったエドワード・サピアイシの言葉と神話を聞き取ったが、イシ自身はアメリカ社会と接触したことによって結核にかかり、死に至ったのである。最後の話し手は暗闇のような状況の中で死亡することが多く、彼らの話す言語もまた何か朦朧とした状況の中で消滅している。

 …そのスミソニアン博物館には、最後の話し手の「脳みそ」まで保管されていたりするのだが。suji
 イシの脳みそ→ 『部族最後の生き残り:イシの記録』
 エドワード・サピア→ 『サピア・ウォーフ仮説再考』

BG箱

この本、ちょっとでかくてちょっと高価、広めの家と大きめのサイフをお持ちの方向け。
本格的に言語図鑑を編むとしたらこんな一冊ではおさまりきりはしない。そのぶん、コンパクトに言語多様性の要点が詰まっている。
お子さんの情操教育にもいいかも。
図書館にあったら手にとってみると吉。


へぇボタン:へぇ〜 と押してみるもよし

●情報庫: 言語 文化人類学

メタル



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