多言語社会がやってきた
言語の科学が”言語の中身や性質”を調べて語るなら、こちらは言語の政治学。
”言語というパッケージ”を社会や行政、市民運動などがどう配置して処理するか。
![]() 「多言語社会がやってきた 世界の言語政策Q&A」 河原俊昭/山本忠行編 くろしお出版 2004/07 |
体裁はまさにQ&A。
見開きで一項目、疑問に対して回答する形で、全部で107項目!。
初心者でも無理なく頭に入る記述でさまざまなトピックについて解説。
近所に異国の言葉を使う人はいらっしゃいますか?
ネットで異言語のページに困惑したことはありますか?
お互い言葉が通じなかったらどちらが相手の言葉を学びますか?
日本語が世界で通用しなくなったらどうします?
「世界言語文化図鑑」(旧版1999年) p.54
日本は一つの国語が浸透した世界で最も同質な言語環境をもつ国のひとつである。
「日本語だけ」ではやっていけない場面は多くなってきている。
日本の中での異なる言語に対する態度、世界に対する日本語認知度の向上をどうするか、ローカル島国感覚な「あたりまえ」だけでやっていたらヤバめ。
「多言語社会がやってきた」 p.4
現代社会は情報戦争の時代と言ってもいいでしょう。そこで最も強力な武器となるのが言語です。
その言語という武器がどこまで通用するか。
どう磨き、どう配置してどう普及させるか。
例えば各国が世界に対してどれだけの規模で自国語の広報活動や普及に取り組んでいるか。
米英仏独の4カ国が質・量ともにトップを走っていて、日本はかなり遅れをとっている。
日本は自国語を普及させることにトラウマを持っていたりする?
貴重・希少な言語は、大手の言語にナワバリを奪われてたくさん消えていっている。
でも、使い手が少ない言語でも、学習制度や保存運動をしっかり組み上げれば廃れることなく生き延びていける。
・「標準語」という呼称を避けるようになったのはなぜ
・「日本語」が決まった経緯は
・政府の「日本語教育」方針は
・言語教育の現場ではどんな偏見や差別が生じているか
・ネット上で使用される言語はどうなるのか、世界にどう影響するのか
・ 複言語主義、言語の グローカル化、 リンガパックス、 エボニックス(エボニクス)、 イマージョン教育…
・ 言語権 、 ダイグロシア、 多言語主義、 言語的多様性、 言語生態学…
とても多様な、言語をめぐる政策たち。
これらをいちいち「どんなものなの」とグーグルでチェックするとしたら、それこそゴミ混じりの中をあちこち覗いてはかき集めなければならない上、冗長だったり過不足あったりデマも含んでいたりだし、かなり面倒で時間ロス。
そこを考えると、見開き一項目でポンポンと要領よく要点をまとめ並べてあるこの本はかなり重宝。
言語に接すると、脳の情報処理能力が向上する。
脳 : バイリンガルになると脳の灰白質が変化する
2004/10 Nature@日本
言語学習は脳の学習パワーをアップさせる:言語刺激が変える脳構造
2004/10 BBC News Learning languages 'boosts brain'
加齢による認知能力の衰え、多国語を操れる人のほうが軽度
2004/06 EurekAlert Being bilingual protects against some age-related cognitive changes
2004/06 Washington Post Bilingualism's Brain Benefits
2004/06 WebMD Bilingualism May Keep the Mind Young
中国語は英語よりたくさん脳力を使うんです 英語は半球だけ、マンダリンは両半球が必要
2003/06 BBC News Chinese 'takes more brainpower'
バイリンガル環境の子、抽象概念の把握が早い
2002/10 中央日報
第2言語習得が中学からというのは、人間の脳発達パターンからして遅すぎるらしいしね…。
言語習得に最適な歳はいつごろ 感覚習得臨界期
視覚:出生後の数週間 認知:出生後の一ヶ月
発音:出生後半年まで 第二言語:10歳くらいまで
2004/04 The Globe and Mail WE CAN BUILD BETTER BRAINS
幼いときに複数の言語に接すると、それなりに頭が良くなるかもしれない。
塾や勉学のたぐいだけでなく、幼いときに直接「異文化の人と接する」経験は、人生を歩む上において多大なみのりをもたらしてくれる。
異文化を虐げることのない、言語の政治を。
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